半導体は1990年頃までは自社で設計した半導体を、自社の工場(foundry、fab)で製造するのが一般的でした。
しかし、半導体の微細化技術が進化すると、新しい技術の研究、新しい工場の建設に数百億円、数千億円、数兆円レベルでコストがかかるようになり、新しい世代の工場を建設できるのは一部の企業だけに限られるようになってしまいました。
このため、多くの半導体メーカーは自社で工場を持たず、半導体の設計だけを行うファブレスメーカーになり、製造はファンドリーに任すという流れが2000年頃から加速しています。
Intelは1990年頃にパソコン向けのCPUのアーキテクチャで勝利し、半導体業界では圧倒的なIDM(Integrated Device Manufacturer: 開発から製造までを垂直統合)企業として成長していきました。
その後、Intelの競合で同じアーキテクチャのパソコン向けのCPUを製造していたAMDは、半導体工場のコストなどの問題から2008年に自社の工場を分社化しました。
一方でIntelは微細化技術を進化させるなど、順調に成長し、設計、製造を自社で行う世界最大の半導体企業として成長していきました。
この流れが変わるのがスマートフォンです。
Intelもスマートフォン向けのCPUを提供しましたが、ARMとの競争に勝てずに2010年代に撤退。スマートフォンのCPUは主にARMアーキテクチャが使われるようになりました。
このARMは、ARMという会社がCPUの基本的な設計などを行っています。このARMのアーキテクチャを使ったCPUをQUALCOMMなどが採用し、自社でスマートフォン向けのCPUを設計します。ARMの基本的な部分は同じなので、同じARMのアーキテクチャを使用していれば、他社のCPUとも互換性が保てます。スマートフォン向けのCPUはQUALCOMM、Samsung、Appleなど各社が提供しています。
QUALCOMMなども半導体工場を持たないので、半導体を製造できるファンドリーに製造を依頼します。
スマートフォンの普及によるCPU以外の関連の半導体含め、半導体産業は成長しますが、その中でも1987年にファンドリー専業として創業したTSMCやSamsungなどがファンドリー事業を急速に成長させています。
2010年頃までは半導体産業で圧倒的に1位だったIntelを自社でメモリやCPUなども製造するSamsungが売上げで追い上げており、Intel 1強を脅かすまでになっています。
そのIntelで問題になっているのが、圧倒的だった微細化技術の停滞です。
Intelは常に微細化技術ではトップでしたが、14nmが当初の予定であった2013年から遅れ、本格的に14nmを投入できたのが2015年になってからでした。
さらに10nmも遅れましたが、2020年から2021年には主要な製品が10nmで製造されるようになっていますが、次の7nmは2023年になるとされています。
半導体の微細化技術は各社が発表する数字だけでは単純な比較は出来ませんが、Intelが7nmと同等としているTSMCの5nmは2020年に市場に投入されています。2023年に投入しても3年も送れることになり、Intel 1強時代は終焉に近づいているように見えます。
この後どうなるかはIntelの判断によりますが、自社で設計、製造する半導体企業として圧倒的だった会社でも、自社での製造にこだわらずにファブレスへ製造を委託する状況になるかも知れません。